カバとキスをした日|南アフリカ・ジェシカに会いに行く

南アフリカに、人とキスをするカバがいます。
名前は Jessica(ジェシカ)。2000年の大洪水で家族から流され、生後わずか数時間で助けられたカバです。
私が会いに行ったのは、2018年5月でした。
この記事のポイント(2026年8月時点)
- 現在は完全予約制。飛び込みでは入れません
- 料金は大人 R300/6〜12歳 R150/6歳未満は入場不可
- 場所は南アフリカ・ホードスプロイト(クルーガー国立公園の西側)

ジェシカとは何者か
2000年、南アフリカとモザンビークを大きな洪水が襲いました。
そのときブライデ川を流されてきた一頭の赤ちゃんカバが、川岸に打ち上げられているのが見つかります。生後わずか数時間。弱って、お腹を空かせていました。
助けたのは、Tonie Joubert(トニー・ジュベール)さんとShirley(シャーリー)さん夫妻。Tonieさんは元ゲームレンジャーで、その経験を活かして、哺乳瓶でこの子を育てました。
それがJessicaです。
Jessicaは大きくなったあとも、川で自由に暮らしながら、人のところへ戻ってくる暮らしを続けています。囲いの中で飼われているわけではありません。 近くの川には野生のカバの群れもいます。
その姿は90本以上のドキュメンタリーで紹介され、いまでは世界的に知られる存在になりました。
私が訪ねた2018年、案内してくれたのはTonieさんでした。

実際にジェシカに会ってみて
私がJessicaに会いに行ったのは、2018年5月。
まず体験したのは餌やりでした。
手渡されたのは、とうもろこしのような餌。Jessicaが大きく口を開けるので、その中に入れてあげます。
想像していた以上に口が大きくて、「本当にカバがこんなに近くにいるんだ」と不思議な気持ちになりました。

そして突然、案内してくれていたTonieさんが、
「Jessicaにキスしていいよ」
と声をかけてくれました。
えっ、本当にカバとキスをしていいの?
そう思っていると、Tonieさんが笑いながらこう言いました。
「Jessicaは女の子だから、男の人にはキスさせないんだよ。」
それを聞いた夫は少し残念そうでしたが、すぐにカメラを構えて、私とJessicaのキスの瞬間を撮ってくれました。
私は動物が大好きなので、怖いというより「本当にいいの?」という嬉しい気持ちでいっぱいでした。
そのやり取りを見ているだけで、TonieさんがJessicaをどれだけ大切に育ててきたのかが伝わってきます。まるで娘を紹介してくれているような、そんな温かい雰囲気でした。
そのあと夫は、Jessicaにお茶を飲ませる体験をさせてもらいました。
夫が飲ませると少しぎこちないのですが、Tonieさんが飲ませる姿はさすがです。
Jessicaの口元に合わせて容器を傾けるのがとても上手で、Jessicaも慣れた様子でごくごく飲んでいました。長い年月を一緒に過ごしてきた二人だからこその信頼関係が伝わってきて、とても印象に残っています。

このお茶はルイボスティー。Jessicaの大好物だそうです。
もう1頭のカバ、Seun
さらにそのあと、少し離れた場所にもう1頭、小さめのカバがいました。
Jessicaと比べると、ひと回り小さく、とても愛らしい姿です。私もその子にお茶を飲ませました。

あとから調べて分かったのですが、この子はおそらく **Seun(セウン)**です。
Seunがここへ来たのは 2012年1月18日。大雨と鉄砲水のあと、Tonieさんの敷地に流れ着いていたそうです。
Jessicaのときと、まったく同じでした。
12年の時をおいて、同じ場所で、同じことがもう一度起きた。そしてTonieさんは、また一頭を育てることにしたのです。
野生のカバは、まったく違う
こんなに穏やかで、人懐っこい姿を見ていると、「カバは危険な動物」とはとても思えません。
だからこそ後になって、野生のカバはまったく別の存在で、とても危険な動物だと知ったときは驚きました。
アフリカでは、カバによって年間およそ500人が亡くなっているとされています。大型の野生動物のなかでも、もっとも人の命を奪っている動物のひとつだと言われます。
理由はいくつもあります。
- 縄張り意識がとても強く、自分の水域に入ってきたものを激しく攻撃する
- 子どもを連れたメスも攻撃的になる
- 体重は最大で2,700kgを超える
- 口は150度まで開き、カヌーを噛み砕くほどの力がある
- 見た目に反して、陸の上でも速く走る
犠牲者の多くは、ボートを転覆させられたことによるものだそうです。
Jessicaは、生まれてすぐ人に育てられた、とても特別な一頭です。
野生のカバは、これとはまったく違います。川辺で見かけても、絶対に近づかないでください。
会いに行くには
場所と行き方
Essex Road, R527, Hoedspruit, 1380, South Africa
ホードスプロイトは、クルーガー国立公園の西側にある町です。
最寄りは ホードスプロイト・イーストゲート空港(HDS)。町の南東15kmほどのところにあり、ヨハネスブルグからCemAirとAirlinkが毎日運航しています。
Jessicaのところまでは、R527をライデンバーグ方面へ約8km。「Essex」と「Jessica the hippo」の看板が出ているので、そこを右折して、未舗装路を約7km進みます。
★交通手段は必ず事前に手配を
この地域に公共交通機関はありません。 移動手段は次のどれかになります。
- レンタカー……私たちはこれでした。空港に営業所がありますが、必ず事前予約を。現地で飛び込みで借りようとしても難しいです
- ロッジの送迎……ほとんどのロッジやゲストハウスが空港送迎を用意しています。宿の予約時に確認してください
- ツアーに組み込む……サファリロッジに滞在するなら、行程に入れてもらえることもあります
4WDでなくても行けました
最後に未舗装路を7km走ると聞くと、「四駆じゃないと無理かな」と思うかもしれません。
でも、私たちが借りていたのはフォード・フィエスタ。ごく普通の小型ハッチバックです。 それで問題なく走れました。

ただし、私が訪れたのは5月で乾季でした。雨季(だいたい11月〜3月)は路面の状態が変わる可能性があるので、その時期に行く方は、レンタカー会社や宿に確認してみてください。
★予約は必須です
私が訪れた2018年当時は予約なしで見学できましたが、現在は完全予約制になっています。
公式サイトにも「予約のみを受け付けており、飛び込みの方はお受けできません」とはっきり書かれています。行けば入れる、ではありません。
料金(2026年8月時点)
| 区分 | 料金 |
|---|---|
| 大人・12歳以上 | R300 |
| 6〜12歳 | R150 |
| 6歳未満 | 入場不可 |
現地でクレジットカード払いができます。
時間
| 曜日 | 時間帯 |
|---|---|
| 月〜土 | 08:45–09:45 / 09:45–10:45 / 13:45–14:45 |
| 日 | 08:45–09:45 / 09:45–10:45(午後の回はなし) |
予約方法
- 公式サイト:jessicahippo.com
- メール:joubert@jessicahippo.com
- 電話:015 110 0644(07:30–16:00)
- WhatsApp:083 5225 025(07:30–20:00)
料金や時間は変わることがあります。訪問前に必ず公式サイトでご確認ください。
午後は、ブライデリバーキャニオンへ
Jessicaの見学は1時間ほどで終わります。
私たちはそのあと車で足をのばして、ブライデリバーキャニオンへ向かいました。
道のりは、R527を西へ進み、R36のアベル・エラスムス峠を越えてR532へ。距離はルートによって60〜95kmほど、所要時間は1時間〜1時間15分が目安です。
ただし、Jessicaのあたりは標高350m前後、展望台は約1,330m。1,000m近く登ります。 私たちは途中で写真を撮りながら走ったので、実際には2時間近くかかりました。時間には余裕をみておくのがおすすめです。
なかでも有名なのがスリー・ロンダベル。3つの丸い岩山が並んでいます。「ロンダベル」とは、アフリカの伝統的な円形の小屋のこと。その形に似ていることが名前の由来だそうです。

別名は Three Sisters(三姉妹)。かつてこの地を治めた族長の、3人の妻にちなんだ名前だと言われています。
道中では、バオバブの木も見かけました。

動物とは関係ありませんが、午前にJessica、午後にキャニオンという組み立てはちょうどよかったです。
Jessicaの見学だけだと1時間で終わってしまうので、半日の予定で考えておくと、この地域を気持ちよく回れると思います。
Shirleyさんのこと
この記事を書くために調べていて、はじめて知ったことがあります。
Jessicaを助けて育てたTonieさんの奥様、Shirleyさんは2023年3月17日に亡くなっていました。 56歳。眠っている間に、静かに息を引き取られたそうです。
私が訪ねた2018年、案内してくれたのはTonieさんで、Shirleyさんにはお会いしていません。それでも、Jessicaと川で一緒に泳ぐShirleyさんの映像は、たくさんのドキュメンタリーに残っています。
そして、もうひとつ。
Shirleyさんが亡くなったその同じ夜に、Jessicaが産んだ生後2日の子どもも亡くなりました。
その子には、Shirleyさんのお父さんの名前をとって「Luko」と名づけられる予定だったそうです。
翌2024年2月、Jessicaはまた子どもを産みました。その子の名前は、Loekoe。やはりShirleyさんのお父さんの名前です。
Tonieさんは今も、Jessicaたちと一緒に暮らしています。
同じ旅で、もう一頭の孤児に会いました
実はこの日の朝、私は同じホードスプロイトで、別の動物にも会っていました。
母親をライオンに亡くし、人に育てられたチーターです。
保護された動物とどう向き合うのか。ここでもう一度、同じことを考えることになりました。
※この記事の体験部分は、2018年5月に訪問した際の記録です。 料金・営業時間・予約方法は2026年8月時点で公式サイトを確認したものです。最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。
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